朝、キスして。

「なに?」

「自分で貼るからいい。ていうか、やっぱり帰って」

「なんで?」


有咲がムッとした。

心が痛いけど、ちゃんと言わなきゃ。


「触るの我慢してたけど……ていうか、今も我慢してんだけど!これ以上一緒にいたら、我慢できなくなる」

「触ればいいじゃん」


ダメだ。全然わかってない。


「俺、風邪引いてんの」

「知ってる」

「熱うつしたくねぇの」

「同じ布団で寝てたんだから今さらだよ」


撃沈。

詰んだわ。これ以上、どうやって突き放せと?

突き放しても屁理屈こねて攻撃してくる彼女に、どう言い返せと?


昔から俺は、有咲の手のひらの上なんだよ。


「ていうかさ」


挫折のような敗北を味わって沈んでいる俺。

すると、有咲がそう前置きして妙なことを口にする。


「もう遅いかも」

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