朝、キスして。
「まぁよかったんじゃない、別れて。あいつ、いい噂なかったし」
「は?」
「あ、いや……。なんでもない」
今さら口ごもっても遅い。
何が言いたいのかわかってる。
「他に彼女がいたことでしょ、知ってるよ。……でも好きなんだから仕方ないじゃん」
彼氏に他校の彼女がいること……それどころか、他に何人もの女子に手を出していたことも知っていた。
私には一度も手を出さなかったのに……。
「有咲、猫好きだったろ」
「……?」
「あげる。……俺のじゃねぇけど」
瞬は猫を抱きかかえると、それを私に渡してきた。
「ちょっとは癒されるだろ」
あどけない笑顔を見せながら……。
受け取った猫は温かくて柔らかくて。
本当はちょっとだけ癒やされてしまったけど、
“うん”とは答えない。
何もなかったみたいに優しくしてくる、瞬のそういうところが私は嫌い。