朝、キスして。

「ていうか、いきなり消さないでよ!」

「ごめんごめん。でも、やっぱ怖いんじゃん」

「怖くない!懐中電灯貸して。私が持つ」

「はい」


差し出されたのは懐中電灯……ではなく、瞬の左手。


「……?」

「暗くて怖いときはよく手繋いでたじゃん」


よくって……。

それ、小学生の頃の話……。


「っ!」


ちょっと気を抜いた一瞬の間だった。


まるで糸で結ばれたもの同士が迷いなく出会うみたいに……手を掴まれた。

指と指の合間に絡みついて、交わる手。


「離してよっ」

「いいからいいから」


離そうとしても離れない。

それどころか、瞬が歩き出したことで引き寄せられる。


……瞬ってこんなに強引だったっけ?


昔はもっと優しくて。

どちらかといえば、私が振り回してた。


あれしたい、これしたい、って言えば従ってくれる。

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