朝、キスして。

小学校低学年の頃、ある洋画にハマった私。

王子様とお姫様のキスシーンがあって……それがとても幻想的だった。

ランタンの灯った湖をバックに、王子様がお姫様の肩に手を置いて優しくキスをする。


何にでも影響される年頃。当然、憧れる。

だから私は、自分にとっての王子様──瞬に「チューして」ってせがんだ。


本当に優しかったんだよ、瞬は。

照れながらもしてくれた。


……でも、理想とはほど遠くて。


理想に近づくまで私は毎日キスをせがみ、瞬は私が飽きるまで付き合ってくれた。


という、とんでもない黒歴史を思い出してしまったけど……。

中学までの私たちはそんな関係。


だけど、いつの間にか立場が逆転してる。


力だって全然敵わない。

強引に私の手を引く瞬は、ちゃんと男の人になってる……。


敵わないってわかったから、大人しく手を繋いで歩くしかない。

さっさと終わらせちゃえばいいんだ。


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