朝、キスして。

「怒んなよ」

「怒ってない。けど、なんでそんなことしたの?」

「有咲とペアになりたかったから」


そう言う横顔は、胡散臭い笑みを見せている。


「冗談言わないで」

「冗談じゃねぇよ。有咲が他の男子とペアになったら困るし、それに……こうでもしないと有咲、俺を避けるだろ?」


……悔しいけど、否定できない。


「ズルはよくないって言ったの誰よ」

「学級委員の特権だよ」

「職権乱用」

「これくらい許せ」


手を引く力はやっぱり強引。

だけど、触れる熱は温かくて。懐かしささえ覚える。


ドキドキするのに安らぐような……。

不思議な感覚。


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