朝、キスして。
普通は、時間でも止めない限り、予測している最中に転んでいる。
衝撃が来ないどころか、ふんわり宙に浮いたような感じがした。
……ただ、それは一瞬だけ。
今、感じるのはお腹の辺りに触れる熱。
目を開けると、ハルくんに後ろから抱き止められていた。
「あっぶねぇ」
耳元で聞こえるハルくんの焦りを含んだ声。
痛みが来なかったのは、ハルくんに助けられたからだった。
転ぶと思っていた私はしばらく放心状態が抜けず。
「大丈夫?」
「……」
「おい」
「……っ、だ、大丈夫…!」
「怪我は?」
「……ない」
「ならよかった」
「…あ、ありがとう……」
私のお腹に回していた手をするりと抜いたハルくんは、何食わぬ顔で歩き出した。