朝、キスして。
「そうだ!ハルって言ったら、昨日のキスの相手、誰だったんだろうね」
「え、なんの話?」
おい、吉田ぁーーーっ!!!
あっさり寝返りやがった。
自分が卑下されても恋バナに興味持つのかよ、おまえは。
「うちら、昨日の夜、ハルが女子とキスしてるの目撃しちゃってさ。告白を断るのは彼女がいるからって噂があったけど、あれ本当っぽい」
「マジで!?相手は?」
「だからわかんないって。見えなかったの」
「でも、うちの学年であることには間違いないから。相手が誰なのかみんな探してる」
“みんな”というワードにゾッとする。
目撃して、それを広めてるってことだろ?
怖いよな。勝手に広まる噂。
俺も知らないうちに広められているのだろうか。
しかし……こうなったらもう止められない。
恋愛絡みの話ほど盛り上がるものはない、ということを俺は昨日の夜に嫌というほど実感した。
「はぁ……」
呆れのため息が出た、そのとき。
「危ないっ!」
叫び声がして。
反射的に声のする方を見た。
……見なきゃよかった。