愛しの鳥籠〜完結篇〜
2.自我
side.yuki
「…う、」
ゆっくりと覚醒してゆく頭がひどく痛む。
「ここ…」
僕が今まで寝ていたであろう場所は寝室ではなく、リビングだった。
ソファーに横になっていた僕の体には我が家で一番温かい毛布が掛けられている。
…そうだ。チャイを飲みながら眠くなって、そのまま…
「…ラン?」
ランは普段このリビングかキッチンで1日の大半を過ごしていると言っていたのを思い出した。
が、そのランが居ない。
痛む頭を押さえながら何とか立ち上がると、のろりとキッチンに向かうが、やはり居ない。
と言うよりも、今この家に自分以外の人が居る気配がしない。
嫌な予感が身体中を走り、冷たい汗が背中を伝う。
…まさか。