その騎士は優しい嘘をつく
「おい、ハイナー」
 ハイナーと呼ばれた男。彼は騎士団に所属する男。ハイナー・ホフマン、年は二十九になったところ。結婚適齢期と言うには少し遅い年齢。魔物討伐を専門とする第二騎士団の団長という職に就いている。

「お前。彼女には言ったのか? その、一年近く遠征で不在にするから、これから会えなくなるってことを」

 このおせっかいな男はロルフ・ベーアという。長年、彼女すらできなかったハイナーを案じ、彼女と呼べるような女性を紹介してくれたのがこのロルフだった。彼は第二騎士団の副団長を務めていた。
 そんな副団長である彼が上司であるハイナーを捕まえて、その名を呼び捨てにできるということは、二人の関係はそういう関係ということ。
 それにも関わらず。
 俺って、恋の天使じゃね? と、顔に似つかわしくないようなことをほざくのが、玉に瑕でもある。

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