その騎士は優しい嘘をつく
 次の日。なんとか無事だったクッキーを手にしながら、アンネッテはハイナーとの待ち合わせ場所へと向かった。彼が難しい顔をして立っていたので、恐らく遠征の件を言われるのだろうと思っていた。

 一年。

 短いようで長い時間。長いようで短い期間。大丈夫、待っていられる。そう決意して、お腹の前でそっと手を組む。

「ハイナー。お待たせてしまってごめんなさい」

「いや。いい。俺も今来たところだから」

 彼は優しい嘘をつく。

「アン。俺はお前に言わなきゃいけないことがある」

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