その騎士は優しい嘘をつく

「このようなことを口にしたら、はしたないと思われるかもしれませんが」
　と、彼女の方から告白され、その後二人は付き合うようになった。

　だからハイナーは、結婚については自分から口にしたかった。
　それにも関わらず、なぜ、あのようなことを口走ってしまったのか。

　途中まで書いた手紙を、またクシャリと乱暴に掴むと、丸めてポイとゴミ箱へ投げ入れた。

　それを何度も繰り返す。途中、夕飯の時間になり、入浴の時間になり、それでも手紙は書きあがらない。

　恐らく、嫉妬。自分の知らない彼女を目にしてしまったための動揺。
　そして、あの言葉を言えば、彼女が本心を口にしてくれるのではないだろうか、という期待。

　だが、それも全て裏目に出た。