その騎士は優しい嘘をつく
「別れた」
 ハイナーのその一言に。
「は?」
 思わず腰を浮かしてしまったロルフ。目の前にある夕食が、思わず吹っ飛びそうになった。
 ここは騎士団の宿舎の食堂。二人は向かい合って、少し遅い夕食をつついていた。

「別れたって、あのアンネッテと?」

「ああ」
 表情一つ変えずにハイナーは頷いた。そして、肉を口の中へ放り込む。今日の訓練も疲れた。だから腹が減った、だから食べる。

「なんで?」
 すかさずロルフが尋ねた。そう思うのも無理はない。何しろロルフは、二人をお付き合いに導いた彼らの恋の天使なのだから。

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