その騎士は優しい嘘をつく
「あら、ハイナーさん。お帰りになったんですね」
 姉は、アンネッテとよく似た笑顔でそう言った。
 どうやら、疎まれていたり恨まれていたりしているわけではなさそうだ、ということに安心する。

「アンー。ハイナーさんが来られたわよー」

「えっ」
 姉とは違う女性の戸惑う声。それがアンネッテの声であることに、もちろんハイナーは気付く。

「お姉ちゃん、ごめん。今、手が離せないから。よかったら中に」

「ごめんなさいね、ハイナーさん。出迎えもできなくて。どうぞ」

「いえ。今日は、急に訪問してしまって申し訳ない」
 という気持ちもハイナーにはあった。だが、アンネッテに会えるという喜びの方が大きかった。姉に促されるままに、その家の中へと入る。

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