その騎士は優しい嘘をつく
 視線を足元に向けて、ハイナーは呟いた。それに対して、アンネッテは「うん」と頷いただけだった。
 そこでギュッと強く手を握られた。驚いてハイナーはアンネッテに視線を向ける。

「私も、ハイナーに言いたいことたくさんある」
 するとアンネッテはハイナーを引っ張るようにして歩き、一軒のカフェに入る。適当に飲み物を頼むと、オープンテラスへと移動する。

「はい。ハイナー。これ、好きでしょ」

「ああ、ありがとう」

 こうやって彼女は、自分の好きなものも覚えてくれている。温かいカフェラテを渡された。しかもたっぷり砂糖入り。
 二人は丸いテーブルを挟んで、向い合って座った。
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