その騎士は優しい嘘をつく
 その言葉でアンネッテは思い出す。
「そうかもね。あのとき、お義兄さんに料理を習っていたから。その、あなたにいろいろ美味しい料理を作って上げたくて」

 ああ、とハイナーは頷いた。

「だけど、俺はそれを誤解した。だから君に、別れて欲しいと言った」

 そこでハイナーは甘いカフェラテを一口飲んだ。

「君からもらった、クッキー。美味しかった。君からの手紙も読んだ。こんな俺を待っていると、そう書かれていた」

「そう、だったかもね」

「だから、俺も君に手紙を書いた」

「え?」

「だけど、出せなかった。すぐに遠征先へ行かなければならなかったから」

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