その騎士は優しい嘘をつく
「何を?」

「その、この日のためにと思って準備していた指輪だ」

 彼は優しい嘘をつく。

「次、君を迎えに来るときに、もう一度今の言葉を伝えてもいいか?」

 だけど、今日は嘘をついていない。今まで口にしたことは全て彼の本音。
 それに気付いたアンネッテは朝日を反射させる海面のように、きらきらと頬を染め上げるしかなかった。

「それから。俺の子を生んでくれてありがとう。あんなに酷いことを言ったにも関わらず。そうやって、大事に育んでくれていたことが嬉しい」
 頬を染め上げてしまったアンネッテは頷くことしかできない。

「あの後。遠征の前に君に謝りたくて、治療院へ行った。だけど、君は休団していると言われてしまった」

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