その騎士は優しい嘘をつく
 だが、一年ほど、遠征で不在にしてしまったため、両親にも会っていない。しかも戻ってきてすぐにアンネッテに会いにきてしまったから、戻ってきたことさえも両親にも伝えていない。
 両親にも無事に戻ってきたことを伝えないとな、と思った。

 アンネッテは、ささっと胸元を隠すと、またハイネスを肩に担いで背中をぽんぽんと優しく叩く。すると、ゲポッという激しい音が聞こえた。

「今日ね。お姉ちゃんがハイネスと一緒に寝てくれるって。カローラも、ハイネスと一緒に寝たいって言ってるし。いいかな?」

 その、言葉の意味をハイナーは数秒考え込んだ。

「その。ハイナーもハイネスと一緒に寝たいかな、って思ったんだけど」

 どうやら、アンネッテは違う方の意味で尋ねてきたらしい。

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