空を跳ぶ足
そう伝えると、ぱあっと花の咲くような笑顔が向けられた。


「いいんですか。さっきから迷っていたので助かります」


「いえ。散歩のついでなので、全然っ大丈夫です」


好きに歩きたいくーを抱き上げて、北崎さんの家まで案内する。なんと彼女はまだ大学生なんだそうだ。成人しているみたいだけど、30すぎのおっさんには勿体ない。

ましてやこんなに可愛いんだもの。犯罪ではないだろうか。


「それじゃ、ここが北崎さんの家なので、私はこれで……」

「あ!北っち来てあげたよ!」


案内だけして帰ろうとしたら、タイミングの悪いことに、コンビニ帰りの北崎さんと出くわした。


「未奈。ちゃんと歩いて来たんだな」

「北っちが歩け歩けって言ってるんじゃない。ちょっとまだ感覚がつかめてないんだよね」


そう言ったあと未奈ちゃんは北崎さんに足を渡した。膝上から爪先までの、右足だ。

え?

未奈ちゃんは平然と片足で立っていて、北崎さんは未奈ちゃんの足を撫でている。
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