空を跳ぶ足
思いがけなく例の引っ越してきた人の所へ行くことになった。

親が役員をしていることもあって、ヒマな私も集金に駆り出されたからだ。

噂ではマネキンの手足がゴロゴロしているとか。ちょっと怖いよね。

玄関の呼び鈴を鳴らすと、ガタガタと音がして彼が現れた。

Tシャツにラフなパンツで、細かなゴミが纏わりついている。

うっわ。これは彼女いない系だわ。間違いなく。

「こんにちは。自治会の集金に来ました。役員をしている、田上です」

「すみません、まだよくわかってなくて。自治会長さんから話は聞いていたんですけど。今、財布を取ってきますね」

ぱたぱた服をはたきながら奥へと消える。今さら気づいたって遅いんだから。人が来たのに、ゴミまみれだなんて。

「お待たせしてすみません」

戻ってきた彼は、はにかむように笑って髪をかきあげた。

あらわれた目が透き通っていて、そんな瞳で見つめられてドキッとした。
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