甘くて、切なくて。

ホームルームが終わった後、一瞬で女子が集まってきた。

「先生ほんとに彼氏いないの？」
「いないよ〜。いるように見える？」

まだ疑われてる…笑

すると、急に
女子の群れのなかに一宮君が割り込んできた。
「せんせ、下の名前なんだっけ」

おぉ…一宮君食い気味だなぁ…。

「…那月です。」
ちょっと遠慮がちに教えると、ある女子が

「もう！陽斗！女子ん中入ってくんな！
あからさまに狙ってるじゃん。」

この子は…山内 綾香(やまうち あやか)さんね。女子の中心って感じの子かな？

「うるせーマウンテン綾香！せんせーありがとねー。」

一宮君が自分の席に戻りながら山内さんに向かって叫んだ。

マ、マウンテン？

「あーマジでムカつく！あのバカ！」

山内さんが一宮君を睨みながら言う。

「山内さん。マウンテンって何？」

「あいつが勝手にいいだしたんですよ。多分あたしの苗字が山内なんで、その山からとったんだと思うんですけど。ほんとうざい。」

なるほどね。

「そうなんだ！一宮君って面白いんだね。」

そう言いながら、友達と話している彼の顔を遠くから見てみる。

サラサラしてそうな（いや絶対サラサラしてる）少し色素の抜けた薄茶色の髪。
綺麗な二重の大きめの目。
鼻筋の通った高い鼻。
笑うと白い歯がこぼれるように輝いている。
少し日焼けしているから外で動く部活に入っているのかな？

とにかく彼は誰の目にもとまるくらいのイケメンだ。

あんなにイケメンだったらやっぱり…

「ねぇねぇ、一宮君って彼女いるの？」
気になった私は山内さんに聞いた。

すると山内さんは意外そうに、

「それがね先生、あいつそういうこと全然教えてくれないの。結構モテてるけど遊んではないと思うよ。あいつ、部活に命かけてるバカだから。」

へぇ…そうなんだ。なんか意外。
あのルックスなら女子がたくさん集まりそうだな。

そう考えていたとき、ふと一宮君と目があった。
にこっと笑いかけられた私は、胸がドキッと鳴った気がした。