婚約破棄された私は悪役令嬢に堕ちて慰謝料としてこの国を貰いました 〜冴えない地方令嬢の復讐劇〜
今日が約束の日ね。さて、私への忠誠は誰が一番かしら。見つけられない人はいるのかしらね。もっとも、処刑だなだなんて……野蛮なことを私がするわけありませんけれど。
私は屋敷で悪魔の笑みを浮かべながら、彼らの到着を静かに待ってた。仮に見つけられなかった場合は、私の下僕として一生をすごさせ、逃げれば一族まるごと下僕にするだけ。
それに、あの場で『処刑』という言葉を出せば、必死になってくれる。裏切りを阻止するのに使ったのだから。
「アナタが一番のようね。それで、私への貢物は用意できたのかしら?」
最初に来たのはファッションデザイナーの男。
彼はゴマをすりながら私の前に立っている。安いのか軽いのか、頭をペコペコ下げる姿は、まるでししおどしのよう。
そんな彼が連れてきた男とは……。
「もちろんにございます、レイチェル様。さぁ、失礼のない挨拶をするのだぞ」
「はっ、僕の名前はケリー、父はこの国で議長をしております。どうか、よろしくお願いします」
「議長の息子、ね。もちろん、長男ですわよね?」
「レイチェル様、その通りにございます」
ルックスは、そうね、私好みではあるわ。それに、議長の息子というのも、ポイントが高いわね。点数をつけるなら……八十点ってところかしら。
合格ラインを七十点と勝手に決め、それ未満なら下僕とする。もちろん、つける点数はすべて私の独断と偏見よ。
「いいわ、合格ね。セバスチャン、彼らに部屋を与えなさい」
「かしこまりました、レイチェル様」
執事長のセバスチャンに連れられ、あの二人は私の前から去っていく。出だしからの好調っぷりに、私の心は嬉しさで満たされていた。
そして、次にやって来たのは……。
「レイチェル様、お待たせいたしました。アナタ様にお似合いの方を連れてまいりましたので、ぜひ、お納めください」
「アナタのお名前はなんというのですか?」
「ワシの名は……」
「誰が、ちょび髭オヤジの名前なんて知りたいと思うのですか。そこの青年に決まってるわ」
「俺の名はゴンザレス、見ての通り、筋肉を愛する者なり」
「なるほど、なかなか、いい筋肉をしてるわね。ヨダレが……いいえ、なんでもありませんわ」
顔は中の下ってところかしら。でも、あの筋肉は欲しいわね。鍛え上げられ肉体こそ、私が求めるモノのひとつなの。顔がイマイチ好みではありませんが、キープしておきますか。
「セバスチャン、この二人も部屋へ案内しなさい」
「御意」
このあと、立て続けに五人ほど来ましたが、全員キープということで、私は彼らに部屋を与えた。残りはあとひとり、だったかしら。制限時間まで……残り五分。間に合うかしらね。
──バタン。
あら、ギリギリ間に合ってしまいましたね。つまらな……ではなく、今度はどんな男を連れてきたのかしら。
「お、遅れて申し訳ありません、レイチェル様。馬車が途中で壊れてしまいまして……」
「そんないいわけなど、聞きたくないですわ。そ、れ、で、約束の男は連れてきたのでしょうねっ」
「はっ、レイチェル様に、お似合いの方をお連れいたしました」
ふぅ〜ん、後ろの男がそうなのね。見た目は、普通、ね。でも、嫌いなタイプではないわ。でも、イケメンというには……。
「私はトーマスと言います。この度はお招きありがとうござます。レイチェル様のため、身も心も捧げる覚悟がありますゆえ、どうかよろしくお願いいたします」
礼儀は正しいし、身も心も捧げるなら、キープしておいて損はないわね。それにこの方、どこかで見覚えが……。
私は意識を記憶へと飛ばし、彼から視線を逸らしていた。すると、手の甲に湿った感触が伝わり、すぐに視線をその方向へと向ける。
そこで目にしたのは──。
「な、な、な、何をなさいますのっ。こ、これは……キスではありませんかっ」
まさかの事態に、私は動揺を隠せなかった。キスなど生まれて初めてのこと。だって、ミシェル様は私へキスなどしてくれなかった。
異性から受ける初めてのキスに、私の心音は大きくなっていった。
私は屋敷で悪魔の笑みを浮かべながら、彼らの到着を静かに待ってた。仮に見つけられなかった場合は、私の下僕として一生をすごさせ、逃げれば一族まるごと下僕にするだけ。
それに、あの場で『処刑』という言葉を出せば、必死になってくれる。裏切りを阻止するのに使ったのだから。
「アナタが一番のようね。それで、私への貢物は用意できたのかしら?」
最初に来たのはファッションデザイナーの男。
彼はゴマをすりながら私の前に立っている。安いのか軽いのか、頭をペコペコ下げる姿は、まるでししおどしのよう。
そんな彼が連れてきた男とは……。
「もちろんにございます、レイチェル様。さぁ、失礼のない挨拶をするのだぞ」
「はっ、僕の名前はケリー、父はこの国で議長をしております。どうか、よろしくお願いします」
「議長の息子、ね。もちろん、長男ですわよね?」
「レイチェル様、その通りにございます」
ルックスは、そうね、私好みではあるわ。それに、議長の息子というのも、ポイントが高いわね。点数をつけるなら……八十点ってところかしら。
合格ラインを七十点と勝手に決め、それ未満なら下僕とする。もちろん、つける点数はすべて私の独断と偏見よ。
「いいわ、合格ね。セバスチャン、彼らに部屋を与えなさい」
「かしこまりました、レイチェル様」
執事長のセバスチャンに連れられ、あの二人は私の前から去っていく。出だしからの好調っぷりに、私の心は嬉しさで満たされていた。
そして、次にやって来たのは……。
「レイチェル様、お待たせいたしました。アナタ様にお似合いの方を連れてまいりましたので、ぜひ、お納めください」
「アナタのお名前はなんというのですか?」
「ワシの名は……」
「誰が、ちょび髭オヤジの名前なんて知りたいと思うのですか。そこの青年に決まってるわ」
「俺の名はゴンザレス、見ての通り、筋肉を愛する者なり」
「なるほど、なかなか、いい筋肉をしてるわね。ヨダレが……いいえ、なんでもありませんわ」
顔は中の下ってところかしら。でも、あの筋肉は欲しいわね。鍛え上げられ肉体こそ、私が求めるモノのひとつなの。顔がイマイチ好みではありませんが、キープしておきますか。
「セバスチャン、この二人も部屋へ案内しなさい」
「御意」
このあと、立て続けに五人ほど来ましたが、全員キープということで、私は彼らに部屋を与えた。残りはあとひとり、だったかしら。制限時間まで……残り五分。間に合うかしらね。
──バタン。
あら、ギリギリ間に合ってしまいましたね。つまらな……ではなく、今度はどんな男を連れてきたのかしら。
「お、遅れて申し訳ありません、レイチェル様。馬車が途中で壊れてしまいまして……」
「そんないいわけなど、聞きたくないですわ。そ、れ、で、約束の男は連れてきたのでしょうねっ」
「はっ、レイチェル様に、お似合いの方をお連れいたしました」
ふぅ〜ん、後ろの男がそうなのね。見た目は、普通、ね。でも、嫌いなタイプではないわ。でも、イケメンというには……。
「私はトーマスと言います。この度はお招きありがとうござます。レイチェル様のため、身も心も捧げる覚悟がありますゆえ、どうかよろしくお願いいたします」
礼儀は正しいし、身も心も捧げるなら、キープしておいて損はないわね。それにこの方、どこかで見覚えが……。
私は意識を記憶へと飛ばし、彼から視線を逸らしていた。すると、手の甲に湿った感触が伝わり、すぐに視線をその方向へと向ける。
そこで目にしたのは──。
「な、な、な、何をなさいますのっ。こ、これは……キスではありませんかっ」
まさかの事態に、私は動揺を隠せなかった。キスなど生まれて初めてのこと。だって、ミシェル様は私へキスなどしてくれなかった。
異性から受ける初めてのキスに、私の心音は大きくなっていった。