婚約破棄された私は悪役令嬢に堕ちて慰謝料としてこの国を貰いました 〜冴えない地方令嬢の復讐劇〜
「レイチェル様の寵愛を受けたく、体が勝手に動いてしまったのです。なにせ、レイチェル様はお美しいお方、きっと、蝶が蜜を求めるのと同じにございましょう」
こ、この男は何を言っているの……。いえ、それ以前に、私にキス、だなんて。もぅ、ありえない、ありえない。胸がドキドキするのは、いきなりするから、だよ。
トーマスの不意打ちで私の頭は大パニック。
手の甲とはいえ、異性の唇が触れたのは初めてのこと。とはいえ、このままでは、せっかく生まれ変わったのが台無しになる。
そこで私は、このトーマスという男を直属の下僕として、そばに置こうと考えた。私を惑わさぬよう、思う存分こき使い、二度とあのようなことをしないよう、しつけるため……。
「と、取り乱しましたわ。そうね、絶世の美女を前に、それが普通の反応ですわね。で、も、これは罰が必要なようね。トーマス、このレイチェルに、一生下僕として仕えなさいっ」
これでバッチリですわ。少しでも断る素振りを見せれば、さらなる罰を与えてあげますから。
「分かりました。私は一生、レイチェル様のおそばで、下僕としてお仕えいたします」
「えっ……。そ、そうですの。このレイチェルに仕えることを光栄に思うがいいわ」
「もちろんです。それに、先ほど言った通り、身も心もレイチェル様に捧げましたので」
「そうね、そんなことを言ってまし……」
ま、待って、冷静になるのよレイチェル。
心は分かるの、だって、一生下僕としてなんだから。でも、『身も』とはどういうことかしら。はっ、まさか、そんな……。
私の中で始まる妄想の数々。
目の前にトーマスがいるのを忘れ、彼との妄想劇に私は悶えてしまう。いつの間にか、顔が真っ赤に染まり、体全体に熱を帯びていた。
「レイチェル様、どうかされましたか? 顔が赤いようですが……。まさか、どこか具合でもわるいのですかっ!」
「ふえっ!? か、顔が近い、近いですわ。そ、それ以上近づけるのは禁止、ぜ〜たいにっ、禁止にしますわ」
なんで顔を近づけるのよ。それに、この鼓動……違うから、この気持ちは絶対に違うのよ。だって、私はレイチェル、悪役令嬢になるって決めたのですから……。
紅潮した顔は戻る気配がなく、鼓動は激しくなるばかり。体の熱は冷めるどころか、熱さが増していってしまう。この初めて経験する感覚に、私は戸惑いを隠せなかった。
「ダメ、なのですね。分かりました、レイチェル様へ近づくのは、ここまでの距離にいたします」
「分かればいいのよ、分かれば。セバスチャン、この者たちにも部屋を与えてちょうだい。くれぐれも、粗相のないようにね」
あれ、私は今なんて言ったのよ。『粗相のないうに』とか、これじゃまるで……。違う、これは断じて違うの、ただの言葉のあやなだけだわ。そもそも、トーマスなんて私のタイプではありませんし。
って、なんでそんな考えになるのよっ。そうですわ、深呼吸、深呼吸をするのですレイチェル。主導権を取られてはいけませんの。
トーマスを特別扱いしようとする理由が分からない。私の中で何が目覚めようとする。が、強き心でそれを拒絶し、私は心の牢獄へ閉じ込めた。
この地で君臨するため、人の心を捨てなければならない。だって、この国はそういう場所なのだから……。
こ、この男は何を言っているの……。いえ、それ以前に、私にキス、だなんて。もぅ、ありえない、ありえない。胸がドキドキするのは、いきなりするから、だよ。
トーマスの不意打ちで私の頭は大パニック。
手の甲とはいえ、異性の唇が触れたのは初めてのこと。とはいえ、このままでは、せっかく生まれ変わったのが台無しになる。
そこで私は、このトーマスという男を直属の下僕として、そばに置こうと考えた。私を惑わさぬよう、思う存分こき使い、二度とあのようなことをしないよう、しつけるため……。
「と、取り乱しましたわ。そうね、絶世の美女を前に、それが普通の反応ですわね。で、も、これは罰が必要なようね。トーマス、このレイチェルに、一生下僕として仕えなさいっ」
これでバッチリですわ。少しでも断る素振りを見せれば、さらなる罰を与えてあげますから。
「分かりました。私は一生、レイチェル様のおそばで、下僕としてお仕えいたします」
「えっ……。そ、そうですの。このレイチェルに仕えることを光栄に思うがいいわ」
「もちろんです。それに、先ほど言った通り、身も心もレイチェル様に捧げましたので」
「そうね、そんなことを言ってまし……」
ま、待って、冷静になるのよレイチェル。
心は分かるの、だって、一生下僕としてなんだから。でも、『身も』とはどういうことかしら。はっ、まさか、そんな……。
私の中で始まる妄想の数々。
目の前にトーマスがいるのを忘れ、彼との妄想劇に私は悶えてしまう。いつの間にか、顔が真っ赤に染まり、体全体に熱を帯びていた。
「レイチェル様、どうかされましたか? 顔が赤いようですが……。まさか、どこか具合でもわるいのですかっ!」
「ふえっ!? か、顔が近い、近いですわ。そ、それ以上近づけるのは禁止、ぜ〜たいにっ、禁止にしますわ」
なんで顔を近づけるのよ。それに、この鼓動……違うから、この気持ちは絶対に違うのよ。だって、私はレイチェル、悪役令嬢になるって決めたのですから……。
紅潮した顔は戻る気配がなく、鼓動は激しくなるばかり。体の熱は冷めるどころか、熱さが増していってしまう。この初めて経験する感覚に、私は戸惑いを隠せなかった。
「ダメ、なのですね。分かりました、レイチェル様へ近づくのは、ここまでの距離にいたします」
「分かればいいのよ、分かれば。セバスチャン、この者たちにも部屋を与えてちょうだい。くれぐれも、粗相のないようにね」
あれ、私は今なんて言ったのよ。『粗相のないうに』とか、これじゃまるで……。違う、これは断じて違うの、ただの言葉のあやなだけだわ。そもそも、トーマスなんて私のタイプではありませんし。
って、なんでそんな考えになるのよっ。そうですわ、深呼吸、深呼吸をするのですレイチェル。主導権を取られてはいけませんの。
トーマスを特別扱いしようとする理由が分からない。私の中で何が目覚めようとする。が、強き心でそれを拒絶し、私は心の牢獄へ閉じ込めた。
この地で君臨するため、人の心を捨てなければならない。だって、この国はそういう場所なのだから……。