「好き」とは絶対言いません!
ニコニコと笑う麦を見て、花枝は住所を教えた母親に対して軽く殺意が芽生える。告白を断った相手と話すなど、あまりにも気まずすぎる。

だが麦は気にする様子もなく花枝の部屋に上がり、「ご飯作ってあげる!」と言い勝手にキッチンで料理を始めたのだ。花枝が「勝手なことするな!」と怒ってもお構いなしに麦は笑い、麦が作ったパスタとサラダを二人で食べたのである。

その日から、麦は非番のたびに花枝の家に押しかけてくるようになったのだ。花枝が仕事の時は、職場の近くにあるカフェでずっと待機している。

「警察官がストーカーとか、何考えてんの?」

花枝が呆れ半分怒り半分でそう言うと、決まって麦は「ストーカーじゃない。花枝のことを見守っているんだよ」と返す。世の中のストーカーはみんなそう言うんだよ、と花枝は怒鳴りたくなった。

そして今、花枝が寝転がって占領していたソファには麦が腰掛け、コンビニの袋の中からポテトチップスやチョコレートなどのお菓子を取り出し、テーブルの上に置いている。
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