最初で最後の恋をおしえて

 必要なものを買い、帰宅すると羽澄が紬希を抱き寄せて言う。

「笹野さんと、なにかあった?」

 体を揺らし、「どうしてですか?」と疑問を口にした。

「彼女と会ったとき、あからさまに動揺してたから」

 ドッドッドと、鼓動が速くなる。言葉が出てこない紬希の髪を、羽澄は優しく撫でてから言った。

「ちょっと、待ってて」

 紬希をリビングに残し、戻ってきた羽澄は紙袋を手にしていた。

 それは前に紬希にプレゼントと言って渡したために、大泣きにまで発展した有名なジュエリーショップの紙袋。

 その紙袋から目を逸らし、フローリングを見つめる。

「これと、彼女。なにか関係が?」

 ここまで言われては、隠し通せなかった。思わぬところで笹野に会った動揺も手伝って、心にひっかかっていた思いをこぼす。
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