最初で最後の恋をおしえて
沈黙が流れ、それから羽澄が小さくこぼす。
「そんな噂話ひとつで、受け取ってもらえなかったのか」
冷たい声は、胸を苦しくさせた。
「紬希」
こちらを向いた羽澄の手が、腕に触れた。
反射的に体を縮ませると、自分で自分の体を抱き寄せ、彼から距離を取った。
噂ひとつで受け取らなかったわけじゃない。
ただ高価な贈り物をしておけば、喜ぶだろうと気持ちを蔑ろにされた気がしたせいだ。
『俺の気持ち』と言ってプレゼントを渡した彼。
彼の言う気持ちとは、結局はお金で買える程度のものだと言われている気がした。
「私にも譲れない思いがあります」
「ああ」
目をギュッとつぶり、ひと思いに告げる。
「私、羽澄さんの気持ちには応えられません」
しばらく間が空いてから「そうか。わかった」と声がして、視界が回転した。
肩を押され、気づけばソファを背にし、羽澄に見下ろされていた。