最初で最後の恋をおしえて
涙の理由
気づかないうちに泣き疲れ眠っていたらしい。心地のいい揺れを感じる中で声がした。
「泣かしてばかりだ。ごめん」
おでこに優しいキスの余韻を感じながら、再びの眠りについた。
まぶしい日差しに照らされ、飛び起きる。辺りを見回してみても誰もいない。ただカーテンの隙間から伸びる日差しだけが、紬希を照らしていた。
紬希はベッドの中にいた。落ち着いたグレーを基調にした寝具は、羽澄の匂いがして、彼に包まれているみたいだ。
肌を重ねたときの彼ではなく、普段の穏やかな彼の方を思い出した紬希は、自分自身にホッと息をつく。
あのときはどうかしていた。熱に浮かされ、自分が自分ではなかったのだから。
それでも、直前の羽澄とのやり取りを思い返すと胸が痛い。穏やかな彼を、苛立たせたのは自分だ。
今、彼と顔を合わせても、なにを言えばいいのかわからない。それでもジッとしていられず、ベッドから抜け出した。