最初で最後の恋をおしえて

「今からでも訂正すればいい。夜、目が覚めたら、姿を探し、布団をかけてやるくらいには愛おしく思っていると」

 そう言って、彼は「クッ」と笑う。

「いい加減、認めないのなら、もう一度体に聞く」

 両腕が体を包み、服の隙間から肌に触れる。目まぐるしく変わる、彼の表情と言動についていけない。

「やっ、待って」

 体を懸命に身動いでみても、指先は嘲笑うように追いかけてくる。

「嫌われているのなら、それ以下はないわけだからね。好きにさせてもらう」

「やっ。あっ、ひゃあ、くすぐったい!」

 慌てて逃げ出し、離れた場所で羽澄に対し臨戦体制をとる。昨晩とは違い、からかわれているのがよくわかる。

 しかし、羽澄は至って冷静に話し出す。

「一晩よく考えた。そしたら簡単な答えが出た」

「なにがですか?」

 拳を前に構え、警戒を解かない姿のまま、彼の意見を聞く。

「紬希は、好きでもない男に体を許す女なのか?と」

「そんなわけ!」

 ムッとして否定すると「ハハ」と羽澄は笑う。

「ほら、簡単だ。紬希、きみは俺が好きで好きでたまらない」

 仮説を唱えた羽澄は立ち上がり、茫然とする紬希に両手を広げ歩み寄る。少しばかり後退る紬希をいとも容易く抱き締めた。

「捕まえた」

 力なく首を横に振っても、羽澄は腕を緩めない。
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