最初で最後の恋をおしえて
「このままで聞いて。プレゼントを突き返されたからといって、昨日はひどい態度を取った。すまない」
「それは……」
もういいですよ。は、なにか違う。
言葉に詰まっていると、羽澄は紬希から体を離し、目を見つめて言う。
「許してくれとは言わない。ただ、せっかく一緒にいるんだ。険悪な雰囲気でいるのはやめよう。朝食、いるだろう?」
紬希の髪を後ろに流し、おでこに柔らかくキスをする。慈しむようなそんな触れ方で。
「一緒に作ろうか」
「あ、あの」
動き出そうとする羽澄を呼び止める。
「なに?」
柔らかな表情を向ける羽澄に口籠る。
「いえ。なにも」
私はあのキスを知っている。今朝だけじゃない。それは大人の関係になってしまう、ずっと前。
キッチンへ向かう彼に隠れ、おでこにそっと手を当てた。時間差で胸がキューッと痛くなる。
私、彼が好きだったらどうしよう。私の"好き"は彼の言う"好き"と同じなのだろうか。
「紬希?」
「あ、はい。今、行きます」
羽澄の呼び声を聞き、我に返ると、慌ててキッチンへと向かった。