最初で最後の恋をおしえて

「ごめん。抑えられなかった」

 首を横に振り、布団を顔まで上げる。

「シャワーを浴びよう。それから昼飯だ」

 切り替えの早い羽澄に安堵して、彼のあとに紬希もシャワーを借りる。

 まず脱衣所で赤面した。体の至るところにキスマークがついている。

 以前、友人と話していたときに、聞き返してからかわれた経験がある。キスマークは口紅でつくわけではないと。しかもつける男性は独占欲が強いらしい。

「前はなかったのに」

 思い返しそうになって、また赤面する。前回は必死だったせいもあり、記憶がおぼろげだった。けれど今回は鮮明に蘇りそうで、回想を慌てて取り消した。

 首元にはキラリと光るネックレス。つけたまま寝てしまったんだと気づき、鏡に映るネックレスをマジマジと見つめる。

 上品な輝き。なにより彼の想いがうれしかった。

 それなのに勘違いしていたとはいえ、無下に断った自分を恥じる。

「ちゃんと謝らなきゃ」

 心に誓い、ネックレスを丁寧に外してから、浴室でシャワーを浴びた。
< 122 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop