最初で最後の恋をおしえて

 そんな始まり方で、家に帰ってからも何度かメッセージを送り合った。

 行き過ぎない、けれど、『え? そんな台詞言うの?』という絶妙なラインの言葉の洪水は、そのうち『そうだ。彼は恋愛偏差値が高い人だから』という結論に落ち着いた。

 そしたら、少しだけ冷静に見られるようになった。

 それでも会社で会うと思うと、気持ちが落ち着かなくなってくる。

 なにより、小学生たちが休み明けに学校で会うのと同じように、職場で羽澄に対して行動しなければならない。

 羽澄からは《会えるのが楽しみ。でも、忠実に再現しようだとか、そういう無理はしないでいいから》と、天使とも悪魔とも取れるコメントが送られてきた。

《ひとつくらい、小学生たちと同じ行動をしてみるつもりです》

《如月さんに逆戻り》

 笑いマークと共に送られてきた感想。

 大人にも戻りますよ。そうしないとやっていられない。

 鏡に向い、キリリと顔を引き締める。そして頬を軽くパンパンとたたいて、気合いを入れた。

「よし」

 意を決して自宅を後にした。
< 17 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop