最初で最後の恋をおしえて
そんな始まり方で、家に帰ってからも何度かメッセージを送り合った。
行き過ぎない、けれど、『え? そんな台詞言うの?』という絶妙なラインの言葉の洪水は、そのうち『そうだ。彼は恋愛偏差値が高い人だから』という結論に落ち着いた。
そしたら、少しだけ冷静に見られるようになった。
それでも会社で会うと思うと、気持ちが落ち着かなくなってくる。
なにより、小学生たちが休み明けに学校で会うのと同じように、職場で羽澄に対して行動しなければならない。
羽澄からは《会えるのが楽しみ。でも、忠実に再現しようだとか、そういう無理はしないでいいから》と、天使とも悪魔とも取れるコメントが送られてきた。
《ひとつくらい、小学生たちと同じ行動をしてみるつもりです》
《如月さんに逆戻り》
笑いマークと共に送られてきた感想。
大人にも戻りますよ。そうしないとやっていられない。
鏡に向い、キリリと顔を引き締める。そして頬を軽くパンパンとたたいて、気合いを入れた。
「よし」
意を決して自宅を後にした。