最初で最後の恋をおしえて

 目を覚ますと辺りは暗くなっていた。スマホを確認して、今日が日曜日だと知る。

 日にちも確認して、一週間以上眠っていたわけではないとわかり、ホッと息をつく。

 スマホには、葵衣からたくさんのメッセージが届いていた。

《大丈夫?》という心配する内容から《羽澄さんやるわね!》という内容まで。

 とにかく連絡をしてみようと、電話をかける。電話はすぐにつながった。

「もしもし? 紬希?」

「うん。ごめんね。心配かけて」

「もう! 倒れる前に相談しなさいよ。ま、今となっては全部解決したんだけど」

「全部、解決?」

 なにが解決したのだろう。
 不思議に思っていると、葵衣は楽しそうに告げる。

「羽澄さんが大衆の面前で宣言したの! 俺の婚約者になにかする奴は許さないって!」

「へ?」

 穏やかな羽澄に似つかわしくない激昂した発言は、想像が出来なくて現実味がない。

「婚約が社内で大々的に発表されても、スカしちゃってさ。なんなのよコイツ!って思ってたわけ。それが」

 紬希が葵衣に婚約について話せずにいる間、葵衣がそんな風に思っていたとは、初耳だ。

 紬希は羽澄との関係を自分の中で整理しきれずにいて、葵衣に話せなかった。葵衣は葵衣で無理に聞いてこなかった。それがとてもありがたかったのを覚えている。
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