最初で最後の恋をおしえて

 出向後、自分の歓迎会が開かれた。にもかかわらず、彼女は自分に見向きもしない。

 高飛車な女なのだと自分を納得させ、手洗い場に行くフリをして、彼女の側を通った。

 恋について楽しそうに語る彼女。そうか。誰かに恋をしているのか。そう思ったら、無性にこちらを向かせたくなった。

 自分が彼女の前に現れれば、少なからず興味を持たれる。そんな自信があったのかもしれない。

 そうではなかったことで、俄然彼女に興味を持った。

 しかし、予想に反し、彼女は恋を知らないと言う。しかも、どうやら自分を婚約者と認識していないらしい。

 それならば、化けの皮を剥がしてやろうと思った。婚約者だと明かす前に、彼女の本性を知るいい機会だ。

 しかし、全ての予想は違っていた。

 ワガママでもなければ、高飛車でもなかった。かわいい見た目そのままに、かわいい女性だと思い知るだけだった。

 年齢にしては幼い印象ではあるが、大切に育てられてきたお嬢様。そのイメージがぴったりと当てはまった。

 如月眞太郎の罠に、はまった気分だった。まんまと、彼の娘に興味を持ってしまったのだから。
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