最初で最後の恋をおしえて
そこからは質問攻め。
家での社長はどうだとか、お嬢様の生活はどうだとか、なんだか拍子抜けする質問ばかり。それでも話せる限りを話した。
父はああ見えて甘党で、書斎にチョコレートを隠していて母によく叱られていると話したら、思いの外盛り上がってしまった。
お父様ごめんなさい。
心の中で謝りつつ、思ったままを話す。
「父に難しい提案を持ちかけるときは、甘いものを一緒に差し入れると、話がスムーズに進むかも知れません」
秘書課の人からは、「いいこと聞きました!」と笑顔を向けられる。
「あ、でも、実際に効き目があるのかは、保証できないです。すみません」
あまりに喜んでもらえたため、自信がなくなり、つい保険をかけたくなる。
「ふふ。いいんです。話のネタに娘さんを出すだけでも、社長って表情が和らぐんですから」
思わぬ情報に「恐縮です」と応えると笑われた。
「如月さんって思っていたより、親しみやすい方なんですね。お話しできてよかったです」
野々山に目配せすると、満足そうに頷かれた。
これが言いたかったんだ。あまりに順調にいい面が現れて、怖いくらいだ。
「では次に、なにかお話しされたい方」
「はい!」
手を挙げたのが笹野だったため、思わず体を硬くする。葵衣も隣でグッと拳を握ったのがわかった。