最初で最後の恋をおしえて

 ほかにもたくさんの人と話し、まだ昼休みも半分程度のところで、野々山から指摘が入った。

「さあ、物珍しいとしても、如月さんに質問が集中し過ぎているわ。如月さんがお昼食べ損ねてはいけないから、ほかの話題にしてください」

 野々山の心遣いには助かった。開始から全く食べる暇がなかったのだから。

 野々山の助言のお陰で、社長の娘の話題以外で各々が聞きたかった質問が飛び交う。

 賑やかで楽しそうだ。これがいつもの女子会の風景なのだろう。

 そんな中、葵衣が声を落とし、紬希にだけ聞こえる音量で本音を漏らす。

「笹野さんの、なにあれ。愛されてる〜とか言って誤魔化してたけど、ただの嫌味じゃない」

「葵衣、聞かれるよ」

「聞こえないって。この席も嫌がらせでしょ」

 盛り上がっているから、少しぐらいの話し声は誰にも聞こえないだろう。

 それに遠慮してなのか、紬希と葵衣の両隣には人が座っていない。そこまで嫌味として取るのは、さすがに寂しい。
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