最初で最後の恋をおしえて

 それには葵衣も気づいたのか、「ごめん。席は私の深読みだね」と訂正した。

 わからない。本当にそうかもしれない。

 そこまで自分とほかの女性社員とは溝がある。その点は真摯に受け止め、心に刻むべきだ。

 たくさん学ぶ面があったのは事実。野々山には感謝しなければ。

 お昼休み十分前に女子会は解散となった。みんなぞろぞろと自席に戻っていく。紬希たちも戻ろうとしたところで、野々山に声をかけられた。

「頑張ったわね。つらい場面もあったでしょうけど、大丈夫だった?」

 野々山に見透かされていたのだと思うと居た堪れない。出来る限りの笑顔で返答する。

「ありがとうございます。勉強になりました」

「また懲りずに参加して。今のイメージは"社長の娘"でも、あなたの良さを知ってもらえるわ」

 社長の娘。わかっていても、改めて重い十字架だった。もちろんそのお陰で恩恵も受けているのは、理解しているけれど。
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