最初で最後の恋をおしえて

 手を外されて明るくなった視界の先で、羽澄に紙袋を渡された。

「これは?」

「開けてみて」

 紙袋の中には小さな細長い箱。紙袋にも、箱にも、ある有名ジュエリーショップの名前が綴られている。

「あの、いただけません」

 箱に結ばれているリボンを取りもせず、紙袋ごと羽澄の方へ押し戻す。絶句した羽澄と目が合い、心苦しい。

 今まで気にしていなかったのに、彼の左腕にのぞく時計が視界に入り、顔を背けた。

「俺の気持ちなんだ。受け取ってほしかったな」

 小さなつぶやきに、胸が押しつぶされそうになる。

「いや、迷惑ならいいんだ」

 かすれた声を聞くと、張り詰めていた気持ちが決壊して頬を涙が伝う。

「すみません。本当にごめんなさい」

 肩を抱き寄せられ、羽澄の胸に顔を埋める。

「きみが好きだ」

 囁かれた言葉は涙を助長して、彼から離れられなくなった。
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