最初で最後の恋をおしえて

 暗闇で目が覚めた。

「起きた?」

 声がして、肩を揺らす。

「羽澄、さん?」

「俺じゃなかったらホラーだ」

 苦笑するのはいつもと変わらない彼で、なんだか変な感じがする。

「体、平気?」

「そ、そんな、した後、みたいな会話しないでください」

 いつも通りなのに質問はあけすけで、頭が混乱する。

「した後、でしょう?」

 冷静に言われ、顔が熱くなる。

「あの、私、もう帰ります、ね」

 羽澄はようやく顔を上げた。紬希はなおも続ける。

「明日は、仕事がありますし」

 服は着ていた。羽澄が着せたのだろうか。考えるとどうにかなってしまいそうで、深く考えないように努める。

 明日はまだ金曜だ。いや、もう今日か。変わらず出社して仕事をする朝がやってくる。

 羽澄は髪をかき上げてから、悪い笑みを浮かべる。

「ふたりで休めばい。いい具合に噂が広がって、都合がいいかもしれない」
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