最初で最後の恋をおしえて
葵衣は、切れた電話に向かって本音をこぼす。
「私は紬希だって、恋してもいいと思うんだけどな」
厳しいまでに自分自身の行動に制約を設けている紬希を間近で見ていて、ついそう思ってしまう。
葵衣は紬希の幸せな姿を想像すると、そこに羽澄がいる光景が思い浮かんだ。
「ふふ。都合よく考え過ぎかな」
今から紬希は羽澄と会う。もちろん葵衣まで行って、ふたりの始まるであろう関係に水を差すつもりはない。
けれど、なんとなく意味もなく歩き回る。
そしてふと、自分の方がそわそわしていると気づき、「これが恋の力だったりして」と茶化して肩を竦めた。