最初で最後の恋をおしえて
電話を切り、葵衣の言葉が頭をぐるぐる回る。
え? だから私、昨日彼とああなってもいいと思ったの?
自分の気持ちなのにあやふやで、どうして拒絶しなかったのか、実際のところ自分でもわかっていない。なにより途中からは、自分から求めてさえいた。
昨晩を思い出しそうになるたびに、色んな言い訳は浮かんでいた。雰囲気に飲まれたせいだとか、大人同士だから普通だとか。
だいたい婚約者に捧げるために守ってきたのだから、彼とああなるのは正しいわけで。
どれもしっくり来なかったのに、『好きだから』ただそのひと言で全ての説明がつく気がした。
ひとり考え込んでいると、声をかけられる。
「ねえ。今から俺たちと遊びに行かない?」
顔を上げると、男性ふたりが紬希の前に立っていた。
「私、人と来ているので」
断っても、男性はしつこく絡んでくる。
「待ってるのに、来ないんでしょう?」