最初で最後の恋をおしえて

「葵衣ちゃんだっけ? 一緒に暮らしたらって言われただろ」

 ギクリとして、一瞬言葉を発せられない。どうにか苦し紛れに口を開く。

「嫌なら断ればいいとも言われました」

 なんでだろう。すごくかわいくない言い方。

「無理強いはしない。考えて」

 そう言って羽澄は体を離した。あれだけ離れたいと思っていたのに、急に人恋しくなるから不思議だ。

 でもそれは、ぬくもりが急になくなったからであって。

 自分自身によくわからない言い訳をして、行こうとする羽澄を見つめる。

 その彼がさりげなく紬希の手に、自分の指を絡めた。

「少しだけ、手を繋いで歩かせて」

 昨日は有無を言わずに、手を引いて歩いたのに。それよりもっと、触れてないところがないくらいに全てに触れたのに。

 今は数本の指だけでつながる指先が、なんだかムズムズする。

 羽澄に手を引かれるまま、紬希は彼の後を歩いた。
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