最初で最後の恋をおしえて

 ソファに降ろされると、優しく問いかけられる。

「さあ、今日は帰るのか泊まるのか、そろそろ親御さんに連絡しないと」

 時間はまだ八時だ。成人した大人が連絡する時間ではない。けれど、羽澄の立場を考えれば当然だろう。

「でも」

「そんなに警戒するなよ。さすがにもう手は出さない」

 どこをどう信用すればいいのかわからなくて、羽澄をまじまじと見つめる。

 すると彼は「キスしようとして泣かれるのは、さすがに傷つくよ」と言って「そうは見えないだろうけど」と自嘲した。

「どんな理由でもいい。今日は側にいてくれないか」

 羽澄を真っ直ぐに見つめ、目を閉じる。

「わかりました」

「良かった」

 声を弾ませる彼は「じゃ電話してこよう」と席を外そうとする。

「いつもは父に連絡しているんですか? 近くで聞いていたいです」

「それは、構わないけど」

 不思議そうに言ってから、羽澄はスマホを取り出して電話をかけた。
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