最初で最後の恋をおしえて
羽澄が出かける準備をしに奥の部屋に向かっている間、紬希は自分の姿を確認する。
昨日ほどではないとはいえ、泣いてしまった。化粧も崩れている。
コンビニくらいなら、出掛けて大丈夫かな。そういうときに限って、知り合いに会ったりするのだけれど。
「ほら。探したらあった。オシャレ眼鏡とは言い難い伊達眼鏡」
手渡されたのは、セルフレームの黒縁眼鏡。
「化粧落ちてるの、気にしてるみたいだったから」
かけてみると、片方がズリ落ちる。
「ふふ。大きいみたいです」
「それはそうか。男物だもんな」
「俺の顔がデカイわけじゃないよな?」と確認をされ、吹き出してしまった。
「おいおい。フォローしてくれよ」
「人柄の良さは、顔の大小では決まらないと思います」
「いや、そっちのフォローじゃなくて」
戯れ合って、笑い合って。
仲良しのお泊まり会みたいだ。すごく楽しい。
近くのコンビニまでは、手をつないで歩いた。なんとなく気恥ずかしい。
「せっかくだから、遠回りして行こうか」
「なんのせっかくですか?」
「いいから」