もう、キスだけじゃ足んない。


遥は芸能人で、bondのメンバーの1人で。

平日土日、昼夜関係なく仕事があって、忙しくて。


「時間があるときは胡桃のこといっぱい甘やかしたい。離れてても、いつも俺でいっぱいになっててほしいから」


「遥……」


まっすぐ真剣なものに変わった瞳が、またふっと細められる。


「あーあ。もう毎日、胡桃と一日中ベッドの中で過ごす生活したい……」


「そ、それは……っ」


なにも言えない自分。

だって私も心の中では、ほんとはそう思っているから。


「胡桃」

「遥……」


ぎゅっと包むように抱きしめられて、遥のにおいを胸いっぱいに吸いこむ。


遥にあげた世界で一つだけの香り。

大好きなオレンジブロッサムの香り。


遥を補給してるみたい……。

ドキドキして、心も体も全身が満たされていく。


「じゃあ、キスする前に一つ質問」


「結局するんだ……?」


「するよ、もちろん。
今からめちゃくちゃ」

「っ……」


「形成逆転ってことで、選んでくれる?」


「な、なにを……」


「俺にめちゃくちゃにされるか、
とろとろになるまで甘やかされるか」


「っ、バカ言わないで!」


拒否権は……。


「ないに決まってるだろ」

「反応しないで!」


『……』


もう、ほんとに聞こえない……!

ほんっとになにも聞こえない……!!


さっきまで真面目な話してたと思ったら、またすぐこうなる!!


「まじで形勢逆転だな。
とりあえず、我慢の限界だから口あけて」

「ちょっと黙って!?」


「な、時間もったいない。
はい、あーんして」

「っ、もう……っ」


最後の最後はやっぱり遥に甘い私。


「今まで心の声で伝えてた分の愛も、聞こえなくなった分、ぜんぶこうやって伝えていくから」


「っ、は……ぁ、」


「今までよりも、もっともっと。
全身使って愛してあげる」


遥の心の声が聞こえなくなって、代わりに遥に私の心の声が聞こえるようになった逆転生活。


「好きだよ、胡桃。
すげえ好き」


遥の愛情表現がどんなふうになるのか。

これから、いろんな意味でドキドキです。
< 15 / 323 >

この作品をシェア

pagetop