もう、キスだけじゃ足んない。
遥は芸能人で、bondのメンバーの1人で。
平日土日、昼夜関係なく仕事があって、忙しくて。
「時間があるときは胡桃のこといっぱい甘やかしたい。離れてても、いつも俺でいっぱいになっててほしいから」
「遥……」
まっすぐ真剣なものに変わった瞳が、またふっと細められる。
「あーあ。もう毎日、胡桃と一日中ベッドの中で過ごす生活したい……」
「そ、それは……っ」
なにも言えない自分。
だって私も心の中では、ほんとはそう思っているから。
「胡桃」
「遥……」
ぎゅっと包むように抱きしめられて、遥のにおいを胸いっぱいに吸いこむ。
遥にあげた世界で一つだけの香り。
大好きなオレンジブロッサムの香り。
遥を補給してるみたい……。
ドキドキして、心も体も全身が満たされていく。
「じゃあ、キスする前に一つ質問」
「結局するんだ……?」
「するよ、もちろん。
今からめちゃくちゃ」
「っ……」
「形成逆転ってことで、選んでくれる?」
「な、なにを……」
「俺にめちゃくちゃにされるか、
とろとろになるまで甘やかされるか」
「っ、バカ言わないで!」
拒否権は……。
「ないに決まってるだろ」
「反応しないで!」
『……』
もう、ほんとに聞こえない……!
ほんっとになにも聞こえない……!!
さっきまで真面目な話してたと思ったら、またすぐこうなる!!
「まじで形勢逆転だな。
とりあえず、我慢の限界だから口あけて」
「ちょっと黙って!?」
「な、時間もったいない。
はい、あーんして」
「っ、もう……っ」
最後の最後はやっぱり遥に甘い私。
「今まで心の声で伝えてた分の愛も、聞こえなくなった分、ぜんぶこうやって伝えていくから」
「っ、は……ぁ、」
「今までよりも、もっともっと。
全身使って愛してあげる」
遥の心の声が聞こえなくなって、代わりに遥に私の心の声が聞こえるようになった逆転生活。
「好きだよ、胡桃。
すげえ好き」
遥の愛情表現がどんなふうになるのか。
これから、いろんな意味でドキドキです。