もう、キスだけじゃ足んない。

【杏side】


「桃華のこと、ずっと好きだったから」


「杏……っ」

「桃華」


ぎゅうっと抱きついてくるその体をゆっくり起こしてあげて、正面から抱きしめる。


遥も、胡桃も、桃華も、俺も、ずっと思ってる。


寂しい。

いっしょにいたい。

離れたくない。

たりない。

それ以上なにもいらないから。


ふたりでいる時間が、もっとほしい。


「杏……っ、杏……、」

「桃華、桃華……っ、」


しゃくり上げて、ぽろぽろ涙をこぼす桃華の背中をゆっくりなでる。


「杏……っ、」


ギュッとしがみついてくる細い腕。

俺の名前を呼ぶ震えた声。


ぎゅっと胸が締めつけられる。

苦しい、痛い。


桃華、桃華……っ。


好きなのに。こんなに大好きなのに。

いっしょにいられないのが、つらい。


「桃華……」

「ん……っ、」


そっと軽くふれるだけのキスを落として。


額に、おでこに、こめかみに、頬に。


たくさんたくさん。

俺はここにいるよ、桃華といるよ。

そう伝えたくて、何度も何度もキスを降らせる。
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