もう、キスだけじゃ足んない。


そんなこと、考えもしなかった。


私が我慢すれば、それで大丈夫だって。

良い子ぶって、1人で完結して、遥になにも言わないで。

遥を思ってしたことが、最終的に、遥が自分をどれだけ責めるかも知らないで。


っ……私、結局自分のことばっかりだ。

なにも見えてなかった。


自分さえよければそれでいいって。


なにをしてたんだろう、私。

ほんと、遥を待たせてばっかりだ……。


「ごめん、泣かせて」

「謝るなら、私のほうだよ……」


ゆっくりまぶたをなぞられて、あやすみたいにそっと目尻にキスされた。

遥にこんな顔をさせてしまったのは、紛れもなく私なのに。

その優しさに、また胸がぎゅっと締めつけられる。


「遥……」

「うん?……っ、」


両手でその頬を包んで、ゆっくり頬にキスを落とす。


「ごめんね、ありがとう。
ぜんぶ吐き出させてくれて」


「これからは、ちゃんと言う。
我慢しないで、遥に……」


「胡桃」


「遥……っ、んっ……!」


スっとあごを持ち上げれられてすぐ。

「ふっ、ぅ……」


くらくらめまいがするほど、深いキスが落ちてくる。


「はる、か……っ、」

「胡桃、胡桃……」


何度も何度も名前を呼ばれて。


「好きだよ、好き……すげえ好き、」

「はる、か……っ」


何度も伝えてくれる好きに。

ぎゅっと首に手を回して、私も必死に応える。

私も好き。大好きだよ。


「ふっ、んんっ、」


心の声で言うたびに、遥の口づけは激しさを増して。

「胡桃……」

「はる、か……」


それからどれだけキスをしていたのかわからない。

けれどそっと唇を離されたときにはもう、完全に体から力が抜けて、めまいがして。


「好きだよ胡桃、大好き……」


目を細めてこれでもかと優しくほほえむ遥。

そっとイスに座らされて、額に、まぶたに、こめかみに、顔中に優しい口づけが落ちてくる。


泣かないで、笑って。

そう言うように。
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