もう、キスだけじゃ足んない。


「はい、弓削です」

「あれ……もしかして、胡桃ちゃん?」


「はい、すいません、遥今……っ、!!」


「胡桃ちゃん?どうかした?」


「っ、い、え……なんでも、ない、です」


「そう?遥今、そこにいない感じ?」


「あ……ちょっと、職員室に行って、て……っ」


「そうなんだ」


っ、ばかばか……!

電話してるのに、なに、して……っ。


「んー、胡桃の弱いとこ、責めてる」

「っ〜〜!」


遥に背を向けて座った私に後ろから抱きついてきたと思ったら、耳のうしろから首すじを唇でなぞられて。


「胡桃が弓削ですって言うの、めちゃくちゃいい」

「っ……ぅ、」


「胡桃ちゃん?大丈夫?」


「へい、き、です……っ」


「かわいい……声、出る?」


っ、うん……っ。

だから早く、離れて……っ!


「だーめ。お預けくらって我慢できないから、清見との電話終わるまで、やめない」


だから早く終わらせて?

っ……はる、か……!


「……は、その顔やっば……めちゃくちゃ興奮する。すっげーかわいい」


ひくりと震える体にキッと後ろを睨みつけたら、遥はますます妖艶にほほえんで。


「ほら、清見待ってる。
話続けないと、変に思われるよ」


っ……だれの、せいで……っ。


「俺のせいだな。胡桃、かわいい、」

「っ……!!」


髪をサイドにかき分けられて、後ろからプチプチボタンまで外される。

この間はほんとにありがとね〜!

あの雑誌の反響すごかったでしょ〜?


たぶん遥が戻ってくるまでと思っているのか、そのまま話を続ける清見さん。


「っ……ぅ、」


必死にスマホを遠ざけようとするけれど、ちゅうっと吸いつかれる唇に、体に力が入らなくて。


「遥遅いな〜。まだかかりそう?」


「そう、ですね……」


もう、そう言うしかできない。
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