もう、キスだけじゃ足んない。
【遥side】
「は?来週には帰る?」
「うん。ドラマの撮影、思っていた以上に早く終わりそうでさ。来週の月曜には戻れるんじゃないかな」
「まじで……」
「そのまじで、にはもう帰ってくんのかよって気持ちしかこもってないみたいだけど、合ってる?」
「むしろそれしかねえっつーの」
たとえ1ヶ月といえど、大好きな彼女とふたりで同居生活なんて、どんな男だって夢見るはず。
家に大好きな彼女が待ってると思うとめちゃくちゃ仕事がんばれるし、
正直彼女の「おかえり」を聞きたいがために仕事がんばってるようなもん。
俺のこの仕事の原動力はぜんぶ胡桃。
胡桃がいるからがんばれる。
胡桃が応援してくれるから、なんだって乗り越えられる。
胡桃がいなきゃ、俺は俺でいられなくなる。
あー……早く帰りたい。
今日は早朝から夜までMVの撮影。
朝から夜までずっと会えない。
胡桃がたりない。
胡桃に会いたい……。
「てか、ほんとなの?
桃華から聞いたけど、胡桃の心の声、聞こえるようになったって?」
「ほんとだよ」
なにがどうなってこうなったのかはまったくわかんないけど、正直めちゃくちゃうれしい。
前ほどじゃないにしろ、まだまだツンツン具合がかわいい胡桃。
あのツンがあるから俺はがんばれる……ってまた最初の話に戻るからここは割愛するけど、
その分、心の中ではたぶんデレがすごいにちがいない。
そう思って昨日は不審がられるくらいにずっとそばにいたけど……。
心の声関係なく、胡桃のデレの破壊力はいつも半端ない。
好きとか、もっとって言ってくれるときなんか、いつも四肢爆散するかと思う。
ん?なにそのこわい表現の仕方って?
だってほんとなんだよ。
胡桃のデレって、それくらいかわいくてたまんなくて。
もう一生俺の腕の中から出したくないってくらいになんの。
言われてみれば、100人中100人がうなずくと思う。
まあ、ぜったい聞かせてやらないけど。
俺だけの胡桃だし。