もう、キスだけじゃ足んない。


「胡桃ちゃん。遥来てない?
日向が呼んでるんだけど」


「っ、清見さ……んぅ……」


「だめ。よそ見禁止」


でも、でも……っ。

声、出ちゃう……っ。


「大丈夫。俺が塞いどいてあげるから」


口、あけたままな。


なんて、ますますグッと腰を引き寄せられて、熱い舌がすべりこんできて。


頭、おかしくなる……っ。


酸素がたりない、声が出せない。

密着した熱い体。


そんな状況に、頭がぐわんぐわんして、ますます視界がぐにゃりとする。


「遥?いねーの?」


コンコン。

鍵は内側から閉めてあるから、開けることはできない。

でも……。


「鍵、借りてくるか」


っ!!


「もう、はる、か……っ」

「だめ。もうちょっと……」


それさっきも言った……っ。

清見さん、来ちゃう……!


なんて思っているうちに。


「胡桃ちゃん?遥ー?入るぞー?」


「っ、遥……っ」


もう一度コンコンされて、ガチャガチャと鍵を開ける音がする。


「───ッチ。
胡桃、一旦下ろすな」


「ん……っ」


頭、ぼーっとする……。


「ごめん、大丈夫か?」

「ん……」


頭も体もふわふわする中でなんとかうなずけば、目尻にふわっとキスが落ちてきて、優しく頬をなでられた。


「待ってて。すぐ戻ってくるから」


そう言って遥は名残惜しいと言わんばかりに立ち上がって、シャッとカーテンを閉めると、ドアの方へと歩いていく。


ガチャッ。


「あ、遥……って、おいぃぃぃ……」

「なんだよ」


「おまえ……ここ、楽屋だぞ?」

「それが、なに?」


「なんとなくわかってたけど……はぁ」


「早く。用事は」


「ああ、あのな……って、そんな急かすなよ」


「いいから。早くしろって」


ところどころボソボソ聞こえる2人の声に、ぼんやりしていた頭がハッとする。


清見さんのため息……。

あああ!!もしかして遥、あの格好のまま出ちゃったの!?


そりゃそうだ。

だってジャケットもネクタイもここにあるんだもん。

ジャケットは脱いでるわ、ネクタイはしてないわ、ボタンは外れまくってるわで。


明らか、なにかしてましたよ感が隠せてない……。


ううっ、あとで清見さんとどんな顔して会ったらいいの……。
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