もう、キスだけじゃ足んない。


「こんなとこでやばいだろ」


「女の子の部屋の鍵、無断であけるほうがやばいだろ」


「はいはい、すみませんー。
日向がよんでる。すぐに来いって」


なんでも1時間くらい、時間ほしいって。


「1時間?はぁ……」


「あ、それと。胡桃ちゃん、いるー?」


っ!!


「は、はい!います!」


っ〜〜!!

声裏返った……っ!


慌てて服を直してカーテンを開けようとしたら、逆に清見さんが大声を出した。


「あ、出てこなくて大丈夫!
遥に殺され……いえ、なんでもありません」


え?清見さん?


「あとで俺が迎えにくるから、それまでゆっくりしてて」


「はい……」

「は?俺が迎えに……」

「おまえはいいの。じゃ、頼んだぞ」


俺、外で待ってるから、早く来いよ。

低くなった遥の声を無視した清見さんは、バタンとドアを閉めた。


「胡桃。あけるよ」

「あっ、わっ……!?」


それからシャッとカーテンが開けられてすぐ、遥が抱きついてきた。


「あー……離れたくない。行きたくない」


今の今までずっと一緒にいたせいか。

急に離れるとなると、心の中にぽっかり穴が空いたような気持ちになる。


ちょっとの間離れるだけ。

またすぐ戻ってくるって分かってるのに。


「遥、行かないと」

「わかってる」


「清見さん、待ってる……」

「だからふたりのときに他の男の名前出さないで」


ぎゅうっと抱きしめられた腕の中。

グリグリって肩に顔を押しつけられて、遥は唸るようにため息をついた。


「寂しい?」

「っ……」

「約束、覚えてる?」

「うん……さびしい、よ……」

「ん、俺もだよ」


毎日寂しいって言う約束。

ちゃんと覚えてる。だっていつも思ってることだから……。


「あー……」

「遥?」


どうしたの?

早く行かなきゃ。

ポンポンと遥の腕を叩いて促したけれど、ますますぎゅうっと抱きしめられて。


「ぜんぶ、ほしい……」


え?
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