もう、キスだけじゃ足んない。
「はい、カッート!おっけえ!」
それからどれくらい時間が過ぎたのか。
「すっごく良かったよ!やっぱりふたりのキスは最高だね!」
興奮気味の監督さんの声に、沈みかけていた思考がゆっくり浮上する。
「胡桃、大丈夫か?」
「はる、か……」
「ん、よくがんばったな」
押し寄せる熱と快楽に耐えきれずに落ちた涙をそっと指で拭われて、流れるように起こされた体は、ゆっくり抱きしめられた。
「遥……っ、人が見て……っ、」
「いいから。今は息、整えることだけに集中して」
遥の手、優しい……安心する。
ポンポンとゆっくり背中をなでてくれる大好きな手に、暴れ回る心臓も、乱れた呼吸も次第に収まっていく。
「ありがとう……」
「ん……」
「おつかれ。
遥、胡桃ちゃん」
「日向さん」
「早生、先輩……」
それからなんとか息も整って、ふたりでベッドから降りた瞬間、待っていたかのように先輩が話しかけてきた。
「この後ちょっと話、いい?
今日の撮影はここまでらしいから」
先輩……。
その目はどこか、負けたよと言わんばかりに切なく笑っていて。
「はい……」
ただうなずくしか、できなかった。